クラフトビール新旧IPAを飲み比べ!IPA好きでも改めて感じる違いとは?

世界的には消費量が落ちていると言われているビール。

人々はビールはもう魅力的ではないと

感じているのでしょうか。

 

ビールの消費量が下がっているのは事実ですが、

国内のクラフトビールのシェアに限って言えば、

実は微増しています。(2019年現在)

 

クラフトビールの大国アメリカには及びませんが、

これには日本のドラマやコンビニに登場するなど、

長らく固定されたイメージがあったビールへ様々な角度から

メディアやメーカーがアプローチした功績だと断言していいでしょう。

 

事実、週刊誌などの「クラフトビール特集」は

毎月見かけるトピックとなっています。

 

そうして露出が増えたことにより、

少しコアに思われた「普通のビール」以外の

ビールの種類への認知が進んだためと思われます。

 

一体何が起きているのでしょうか。

 

今回は、クラフトビールの歴史を私なりに解釈。

また、クラフトビール業界を牽引してくれた「パンクIPA」「グースIPA」を飲んでみて、

どちらが現在のIPAビールに近いのか。

飲み比べて解説していきます。

 

そもそもクラフトビールって?

一応、ざっと説明してみます。

よく参考にされる本場アメリカのクラフトビール団体の定義によれば、

「大手資本からは独立しており、年間600万バレル以下(1バレルは約160リットル)生産していること」

とされており、量は想像しにくい数値ですが、

簡単に言うと、

「生産量が少なく、小規模で独立した会社のビール」

のことです。

 

そしてビールと一言で言っても、実は種類が100種類以上あり、

日本の大手が提供しているほとんどのビールは、

実はそのたった一種類なのです。

 

大手が作れない多種多様なビールを造れるのが、

クラフトビール会社の強み、であります。

 

100ある種類の中でも、

近年日本で大変人気になった種類があります。

 

それがIPAという名前の種類です。

 

周りにも、クラフトビール=IPAみたいなイメージを持つ方はいらっしゃいませんか。

それはあながち、間違いではありません。

 

日本のクラフトビール元年はIPAから

IPAとはインディアンペールエールという名前の略称なのですが、

ホップを多く使うことにより、

従来にないほどの爽快感と

アルコール度数の強さで

世界中の人を虜にしたイギリスのビール。

 

その立役者になったのはスコットランドの醸造所、

たった二人の青年(と一匹の犬)から始まった

「ブリュードッグ」という醸造所の「パンクIPA」という商品。

 

それまでスコットランドでは、

伝統的なモルティなIPAが主に流通していた中に、

強い柑橘系の香りを持つアメリカ産ホップを採用して、

その芳香を前面に押し出すことにより、

今までにないクラフトビールとして

多くの人に受け入れられ、

国内外に革命を起こしたのでした。

 

しかし日本は大手のビールが大きな力を持っていたため、

普及にはタイムラグがあります。

 

パンクIPAが安定した人気を世界中で得たあと、

満を持して日本のビアバーで導入され始める。

 

多くのお店でクラフトビール、

とりわけIPAという単語を話せば、

次に出るのは、

「あぁ、あの青いラベルの…!」
「犬のマークのグレープフルーツみたいなあのビール…!」

という現象が起きました。

 

たった数年の間に、

パンクIPAは爆発的に広まり、

現在のように定着し落ち着いたのです。

 

コアだったはずの存在に、

普通の人々が触れた瞬間です。

 

新たな価値観を提案できたことは尊かったのですが…

 

これを便宜上、

第一次IPAブームと名付けておきましょう。

 

IPAブームの移り変わり

パンクIPAが飲まれ続けた結果、

あくまでスコットランドの会社の一商品で、クラフトビールには他にも魅力的な商品がある。

と知ります。

 

そこにアメリカ本土から、

多種多様な強力なビールたちがやってきて、

ユーザーの舌も肥えてきた結果、

パンクIPAはアメリカンタイプのIPAでしたが、

アメリカ本国で気が済むまで、

ホップを詰まれたアメリカビールの登場は、双手で受け入れられました。

 

特に、その特徴差については、ホップの濃度が段違いで、

多くの人に中毒性をもたらしました。

 

その後しばらくは、空前のホップ合戦が始まり、

さらにアルコール度数とホップを高めたダブルIPAや、

ヘイジーIPAのようなフルーティすぎて

ビールのイメージよりもミックスジュースに近い商品が

日本での人気商品に成り代わっていきました。

 

パンクIPAが育てた土壌は、

同じIPAの系列に貢献したこととなります。

 

これを便宜上、第二次IPAブームと呼びます。

 

たったこの数年で、

IPAの隆盛からIPAの中身の変化というサイクルを日本は経験しました。

世界的に見ても大変スピーディです。

 

さて、ようやくIPAの対比のご説明が出来たわけですが、

パンクIPAだって取って代わられる現状を眺めていたわけではなく、

レシピを微調整していたはず。

(クラフトビールの文化ではビールレシピのマイナーチェンジはよくあることで、絶えずその時の旬を意識して醸造家はビールを作り替えています)

 

ビール好きを豪語する人たちからすると、

パンクIPAは今や目新しい存在ではないでしょうが、

ならばあえて問いたい。

 

「今現在のパンクIPAの味、覚えてますか?」と。

 

そこでIPAブームを作った銘柄を飲み比べて、

実際の風味の変遷を調べてみます。

 

今あえて、新旧IPAブーム立役者を飲み比べてみた

(この新旧ですが、独断で決めています)

「旧」にブリュードッグのパンクIPA
「新」にシカゴの醸造所グースアイランドのグースIPA

をチョイスします。

 

現在のグースアイランドは

厳密には、小規模な醸造所とは言えないのですが、

数々の大会で賞を獲得しているので、実力は申し分なし。

 

また、

●アメリカのクラフトビールを置いている店でも取り扱っていて受け入れられていること

●日本には輸入していない限定銘柄でも様々な味のビールも造っていること

●パンク以降アメリカから輸入され且つ価格帯が近いIPAだったこと

●ブリュードッグと同じように小規模からスタートし評価されたことで大会社に成長したこと

上記の理由から採用しました。

 

グラスには、

アメリカンIPAの特徴である、

香りを嗅ぎやすい先がチューリップ型になっているテイスティンググラスを採用し、

注ぐ直前に水でリンスさせています。

 

まずはパンクから。

パンクIPA2

柑橘臭、アメリカン、ライチのアロマが印象的。

まるで果汁を割ったホワイトグレープフルーツジュース。

フルーティでため息が出ます。

 

次にグース。

グースIPA

鼻を近づけるとモルトによる甘さとアルコールの香り、

味には水飴のような甘みがあります。

 

クリーミーで香ばしい、

苦味が後を引きついついまた手が伸びてしまいますね。

両者とも泡立ち方はほぼ同じで良好。

 

ここでまた一回パンクに戻ってみます。

薄い・・・

 

飲み込んで、

しばらく経つと舌が落ち着いてコクも感じるが、

ストンと胃に落ちそうなほど軽いインパクトに。

 

どんどん飲んでしまうでしょう。

最後に顔を出す、黒胡椒のようなスパイシーさ。

素晴らしいです。

 

また今度はグースに戻る

温度上昇もあり甘みがさらに増し、

ホップのアロマが手繰り寄せられるように

変化していきました。

 

パンクIPAとグースIPAを、飲み比べて見えてきたこと

一口目はパンクが圧勝と思ったのに、

驚くべきことにグースは後から巻き返してきました。

 

ガツンとした苦味を求める方には、

ややうまくまとまり過ぎかも。

 

やがてパンクからは、

砂糖菓子のような甘い香りと

薬品が混ざったようなアロマ。

 

喉に当てながら流し込むのもいいですが、

液自体の味が楽しめる。

 

クラフトビール全体で見ても、

苦味はあまりない部類です。

 

改めてこんな味だったかと驚きました。

 

時代を彩った2つのIPAから感じたのは?

グースは苦味と甘味が高いレベルで競り合っているバランスが見事で、

大地の力強さを彷彿とさせる味ですね。

 

・アルコール度の差
・アメリカの他の醸造所「ラグニタス」
・ストーンと同系統のホップ
・モルトの甘味
・アルコール感で下地を作っているスタイル
・国の原料
・マーケットの違い、変化

ちょっと多いですが、こんな感じです。

 

現在のIPAに近いのは、やはりグースだと感じました。

 

日本におけるIPAはこのようにして力強さ重視で、

さらに甘み(ビールにおいては、アルコール度数の高さにもつながる)と

ホップが感じられる銘柄が強く求められていきました。

 

しかしそれにはIPA自体が「おいしい」と思ってもらう素地が必要だったわけで、

パンクIPAの貢献度は計り知れません。

 

それを忘れないように時々また飲み返してみると、

また発見があり、

より一層今飲むビールが楽しめるのではないでしょうか。